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2.デザインのバリエーションを保護する関連意匠制度
工業製品のデザイン開発においては、1つのデザインコンセプトから数多くのバリエーションのデザインが同時期に創作される場合がよくあります。 関連意匠制度は、そのような複数のバリエーションのデザインが生まれた場合に、そのなかの最も中心的な意匠を本意匠として意匠登録し、その他のバリエーション意匠を、本意匠の関連意匠として意匠登録できる制度です。ただし、本意匠と関連意匠とは互いにデザインが類似している必要があります。(注3)
意匠権の大きな欠点のひとつに「類似」と認められる幅が狭いということがありますが、この関連意匠制度を使うと、本意匠の周辺のデザインを、多くの関連意匠で埋めてしまうことにより、類似とされる幅が広くなります。 つまり、関連意匠制度を利用すれば、意匠権の弱点を克服して、強い意匠権が得られるという活かし方ができます。
関連意匠制度でご注意いただきたいのは本意匠の意匠出願と、関連意匠の意匠出願とは、別個の出願であるという点です。したがってバリエーションデザインが10あって、本意匠1,関連意匠9の意匠出願をする場合、特許庁に収める費用は、一つの意匠出願をする場合の9倍かかることになります。
ただし、特許事務所(特許事務所)にこれらの意匠出願を依頼した場合、関連意匠分の事務所費用はいくらか割引になる場合が多いです。
その理由は、本意匠と関連意匠のデザインは似ているはずなので、本意匠で作成した図面は、多少修正すれば関連意匠の図面としても使用することができ、そのぶん図面作成料も割引になるからです。
もちろん当事務所も、関連意匠の意匠出願については、相応の割引を行っております。
なお、関連意匠として意匠出願ができる期間ですが、本意匠が意匠登録されて、その内容が公報に掲載される日の前日まで可能です。
注3:本意匠と関連意匠が互いに類似していない場合は、両者を通常の意匠出願にすることができます。
関連意匠の活用術
上記の通り関連意匠制度は、一つのデザインコンセプトから生まれる複数のデザインバリエーションを保護するための制度です。
したがって、全体デザインのうち、特に創作に力をいれた箇所のバリエーションを関連意匠として意匠出願することで、広い意匠権を取得する、という使い方が一般的です。
しかし、関連意匠制度には、これ以外にも使える、いわば“ウラ”の活用術がありますので、簡単にご紹介したいと思います。
〔特徴ある部分の見極め:創作箇所の特定〕
例えば、右図のTシャツのデザインのように、図柄全体でひとつのデザインというときに、どの図柄に「特徴ある」のかが分からないケースがあります。
またデザインした本人が「この月に架かったブランコの図柄がポイント」と信じて疑わないとしても、客観的に見たら“創作箇所”ではなく、実は別の箇所(例えば、流れ星の図柄)に創作的な価値があったというケースもありえます(主観的創作箇所と客観的創作箇所の相違)。
では客観的創作箇所っていったいどうしたら分かるの?と思われるかもしれません。
それを明らかにする手段として関連意匠制度を利用することができます。
具体的には、完成したデザインを本意匠として、デザインの要素の一部を削除したいくつかのデザインを関連意匠として意匠出願することで、客観的創作箇所を知ることができます。
さきほどのTシャツの例で説明すると、下のイラストのように完成したデザイン(A)を本意匠として、デザイン要素の一部を削除したデザイン(B〜D)を関連意匠とします。
B:流れ星を削除
C:月を削除
D:太陽とブランコを削除
客観的創作箇所が“流れ星”ならA,C,Dが登録意匠となり、Bが拒絶されます。
客観的創作箇所が“月”ならA,B,Dが登録意匠となり、Cが拒絶されます。
客観的創作箇所が“太陽”ならA,B,Cが登録意匠となり、Dが拒絶されます。
客観的創作箇所が“ブランコ”ならA,Bが登録意匠となり、C,Dが拒絶されます。
個々の図柄はありふれたもので、各図柄を組み合わせた構図にだけ客観的な創作性が認められるならは、Aのみが登録意匠となり、B,C,Dが拒絶されます。
もしA〜D全ての意匠が意匠登録になれば、各要素それぞれが客観的な創作的価値があると考えられますので、どの図柄を真似しても意匠権の侵害となる可能性が大きく、非常に強い権利になるといえるでしょう。
こうしてデザインの客観的な創作箇所がどこを知れば、模倣品と思われる品物に対して間違った権利行使をせずにすみ、模倣品対策を実行する上で非常に役立つでしょう。
〔類似範囲の特定〕
関連意匠制度を利用して意匠出願できるのは本意匠と「類似」する範囲までに限られています。
しかし、この「類似」の範囲は客観的に決められる、もっといえば特許庁や裁判所の判断で決められる範囲であって、デザインの創作者が「似ている」と感じる範囲ではありません。
登録意匠の類似範囲が分かりにくいことは意匠権の大きな弱点です。意匠権者は類似範囲広く考えがちで、一方侵害とされた側は狭く考えがちです。 このため侵害訴訟の場では「類似」の範囲がどこまでかが大きなポイントになっています。
バリエーションのデザインが多くできたので、全部関連意匠制度を利用して意匠出願したい場合に、いったいどれを本意匠とし、どの範囲まで関連意匠として意匠出願すればよいかよく分からないことがあります。 また一応、本意匠-関連意匠の組み合わせを決めたとしても、その判断が、特許庁の類似の判断と同じとは限りません。
このような場合、全てのバリエーションについて通常の意匠出願を同日に行うことをお勧めします。(注1)
すると特許庁は、それらすべての意匠出願について類似を判断し、拒絶理由を通知してきます。
その段階で、最も良い形で関連意匠に手続補正することができます。
上のTシャツの例で説明しましょう。
意匠A〜Dについて通常の意匠出願をしたとします。
その後、
「意匠Aは、B,C,Dに類似する」
「意匠Bは、Aに類似する」
「意匠Cは、A,Dに類似する」
「意匠Dは、A,Cに類似する」
という拒絶理由の通知をそれぞれ受けたならば、意匠Aを本意匠とし、意匠B,C,Dを関連意匠とする手続補正を行えば、全て意匠登録されるということが分かります。
パズルのようですが。
このように客観的な「類似範囲」を知ることで、類似品と思われる品物に対して間違った権利行使をせずにすむので、類似品対策を実行する上で非常に役立つでしょう。
注1:関連意匠として意匠出願ができるのは、本意匠が意匠登録されて、その内容が公報に掲載される日の前日までですが、後日意匠出願したものを本意匠として、先に意匠出願したものを関連意匠に手続補正することはできません。このため、どれを本意匠とすれば良いかよく分からない場合は、全てのバリエーションを同日に意匠出願することをお勧めします。
関連意匠利用時の手数料割引について
関連意匠制度の活用術をご説明いたしました。 しかし多くの関連意匠を出願するとなると、料金的にはどうなるのかが気になることろではあります。
関連意匠制度の利用には、原則的には、それぞれ別の意匠出願としての費用が必要になってきます。ただしこの意匠登録特設サイトで関連意匠制度を利用される場合は、二件目以降の図面作成料金は割引させていただいております。
これは関連意匠が類似のデザインを意匠出願する制度なので、一件目で意匠図面を作成したものを、二件目以降の図面に流用することで削減できるタイムチャージ分をお客様に還元できるからです。
さらに意匠登録特設サイトでは、お客様に強い意匠権をご提供することを目的にしています。
そのために、お客様には関連意匠制度の“ウラ”の活用術も是非利用していただきたいと考えています。
そこで、多くのお客様にこの相乗効果を利用していただくために、複数の(注2)の関連意匠を含むご依頼につきましては、図面作成料金だけでなく事務所基本手数料についても割引いたします。
関連意匠制度を使った強い意匠権の取得をご希望の方はお気軽にご相談ください。
注2:およその目安は、本意匠1件+関連意匠7件程度から件数に応じて割引とさせていただいていますが、あくまで目安なのでそれ以下の件数の場合もお気軽にご相談ください。
〔関連意匠制度の関連条文〕
- 意匠法10条1項(抜粋)
- 意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、当該関連意匠の意匠登録出願の日がその本意匠の意匠登録出願の日以後であつて、その本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報の発行の日前である場合に限り、意匠登録を受けることができる。
- 意匠法10条3項
- 第一項の規定により意匠登録を受ける関連意匠にのみ類似する意匠については、意匠登録を受けることができない。
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