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意匠出願 図面?それとも写真?
製品デザインを意匠出願書類で特定する方法
意匠権を持っていると、権利者(意匠権者)以外の人は、その製品デザインを使うことができなくなるので(対世効)、どのような製品デザインに権利(意匠権)が与えられているのかを一般の人が知ることができるようにしておく必要があります。
製品デザインを明らかにするには、文章でうだうだ説明するよりも、絵や写真を使えば一目で分かるようになります。
そこで意匠出願において、製品のデザインの特徴を表わすために図面(意匠図面)が使われます。
ただし図面に代えて、写真(意匠写真)で製品デザインを特定することもできます。(注1)
では、意匠出願する場合に、製品デザインを図面,写真のどちらで特定したほうがよいでしょうか?
以下では、意匠出願での製品デザイン特定を図面で特定する利点、写真で特定する利点についてそれぞれ見ていきたいと思います。
注1:図面や写真の他にも、ひな形や見本で代用できるできる場合があります。しかし、ひな形や見本で代用できるのは、製品が布生地や、袋に入れた時の厚さが7mm以下のごく薄いものの場合に限られており、特殊なケースといえます(意匠法第6条2項,意匠法施行規則第5条)。
〔意匠図面〕で特定する利点
製品デザインを図面で特定する利点としては、次のような点が挙げられます。
製品のサンプルや現物がなくても作成可能
意匠写真の場合、製品のサンプルや現物がまだできていない段階では用いることができませんが、意匠図面ならば製品の設計図やスケッチなどからでも作成することができます。 また、サンプルはつくったけれど実際の製品ではデザインを少し変える予定だ、という場合も意匠図面が適しています。
実物とは異なるメリハリをつけて、デザイン上の特徴部分を示すことができる
製品の中で、この部分がデザイン上の特徴であり、その他の部分のデザインは次世代製品では変更する可能性が大きい、というようなケースがあります。 このようなときに、実際の製品デザインそのままを意匠図面として作成するのではなく、意図的に特徴部分”以外”をあっさり表現することで、特徴部分のデザインを際立たせるとともに、次世代製品としても価値ある意匠権にするなど、戦略的な意匠図面の作図が可能です。
部分意匠制度を利用するときに便利
部分意匠制度(注2)を利用する場合、特徴のある部分”以外”の部分のデザインを点線で表したり、薄墨色で塗りつぶしたりすることで、意匠登録を受けようとする部分を示す必要があります。 意匠図面であればこのような加工が容易なので適しています。
注2:部分意匠制度の詳細については、当事務所コラム「活用できる意匠法特有の制度 1.部分意匠制度」などをご覧ください。
〔意匠写真〕で特定する利点
製品デザインを写真で特定する利点としては、次のような点が挙げられます。
製品のサンプルや現物がある場合、そのままのデザインを表現できる
意匠写真を利用する大きな利点としては、やはり写真は”見たまま”を表わす点でしょう。 そのデザインの持つ「質感」を表わすには、図面より写真のほうが優れています。 また、図面よりも写真のほうが実際の製品デザインのイメージがしやすいという側面もあります。
デザインが複雑な製品の場合、意匠図面作成より安上がり
例えば製造機械などで、細かな部品が外側から見えている場合、製品デザインを特定するためには、それら部品のデザインも表わさなければなりません。 このような複雑なデザインの意匠図面を作成すると、料金が高くなってしまいます。 しかし、意匠写真の料金は、製品デザインの複雑さに関係ありませんので、意匠図面を作成するより安上がりになります。
注意点! 意匠写真の撮影は意匠写真のプロに任せましょう
ただし、意匠写真の撮影は、プロカメラマン,それも意匠写真のプロカメラマンに任せた方がよいでしょう。 最近はご家庭でも高性能のデジタルカメラを持っていらっしゃる方も多いと思いますが、アマチュアの方が、質の良い六面(注3)の意匠写真を撮るのは至難の業だと思われます。 それでも撮ってみようと思われる方は次の点に注意して下さい。
- 対象製品以外のものが何も写り込んでいない
- 背景も、搭載する台も写っていない(白色布、黒色布等の同一のもので覆う)
- 対象製品の影も映っていない
- 六面写真の全てで寸法が合っている
- 六面写真では遠近感を出さない
- 斜視アングル写真では、手前と奥の両方にピントを合わせる
注3:六面とは、正面,背面、平面(上面),底面,右側面,左側面をいいます。
外国意匠出願をする場合の図面などの留意点
日本だけでなく、外国でも意匠権の取得をお考えの場合、図面や写真についても注意すべき点があります。
まず米国では、写真で提出できるのは、図面で描くことができない場合に限られています。また図面も、左45°から光をあてたときの陰影をつける、透明な部分はその部分が透明であるように見えるような斜視図にするなど、独特の特徴があります。ただ一般の人が見れば、日本の6面図よりも米国の図面のほうが、どんな物品なのか分かりやすいように思われます。
香港,台湾,タイ,インドネシアなどでは斜視図が必須の図面であり、米国,中国,シンガポールなどでも斜視図添付が推奨されています。
欧州共同体意匠の場合、提出できる図面の枚数に制限があり、一意匠に添付できる図面は7図面までです。
タイやインドでは、断面図や参考図の添付が認められていません。
このように日本の意匠出願の優先権を利用して外国意匠出願することを予定している場合は、その国の制度に合わせた図面などを用意する必要があります。
その国に合わせた追加図面は、その国に意匠出願するまでに用意すれば多くの場合問題ないでのすが、図面の追加によって優先権が認めらなくなるおそれがないとはいえません。また優先権期間ギリギリで外国意匠出願するような場合は、追加すべき図面の作成で大慌てすることがよくあります。
このため、外国意匠出願の予定があるときには、日本意匠出願の際に、その国で必要とされる図面も作成して添付したほうがよいでしょう。
まとめ
以上見てきたように、製品のサンプルや現物がない場合や、部分意匠制度を利用する場合などでは、意匠図面が適します。 一方、製品サンプルなどが存在して、デザインの質感などを重視する場合は意匠写真が適します。ただし、製品サンプルが存在する場合でも、複雑なデザインでないケースなどでは、料金面などから、かえって意匠図面のほうが適していることもあります。
当事務所では、意匠図面と意匠写真のどちらが好ましいかを、料金面も考慮して、意匠出願のケースごとに検討してお客様にご提案いたします。
特に外国意匠出願を予定されている場合は、予定されている外国の法制度に合った意匠図面についても併せてご提案いたします。
意匠図面よりも意匠写真が適しているケースでは、意匠写真専門業者による高品質な意匠写真撮影も行っております。
意匠図面や意匠写真の作成上の注意点は、特許庁の意匠登録出願の願書及び図面等の記載の手引きに詳しく説明されていますので、興味のある方はご覧ください。
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