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デザインを保護する2つの権利 意匠権と著作権
デザインを保護するための権利としては、意匠権と著作権があります。
しかしこの2つの権利はどう違うのかよく分からないという声を聞きます。
そこで、このコラムでは、意匠権と著作権の違いを分かりやすくイラストを使って解説しています。
ただし、その分法律的な正確性は十分とはいえないので、弁理士試験の受験生でこのコラムを読まれている方はあまり参考にしないようにお願いします。
意匠権と著作権の比較
(1)保護対象
ざっくりいうと、保護を受ける対象が、作品として見て楽しむ(観賞する)ようなものである場合は著作権で保護を受けます。
一方、デザインはさておき、それが持つ機能を利用するためのものであるならば、意匠権の保護を受けます。
例えば、左のイラストに示したような額縁に入った絵画の場合、これを購入する人は、通常どこかに飾って作品として見て楽しむ(観賞する)ために購入するだろうといえます。
このような絵画は著作権での保護を受けます。
絵画の他に、漫画なんかも作品として見て楽しむといえるので、著作権での保護を受けます。
一方、右のイラストに示したようなトートバックの場合、仮にこのチェック柄が美術的に優れたデザインであるとしても、これを購入する人は、そのトートバックは観賞のためにどこかに飾っておくのではなく、普通は「モノを入れる」というバックとしての機能を利用するために購入するのだろうといえます。 このようなものは意匠権での保護を受けます。
意匠権で保護されるデザイン、著作権で保護されるデザインのそれぞれのキーワードを下記の表にまとめました。 当てはまるキーワードが多いほうの権利で、保護が受けられる可能性が高いです。
意匠権 | 実用品,産業,工業デザイン,インダストリアルデザイン,便利,機能を使う |
---|---|
著作権 | 美術作品,文化,カルチャー,飾る,見て(観賞して)楽しむ |
意匠権と著作権の境界領域にあってよく争いになっているのが「人形,フィギュア」です。
人形,フィギュア関係で、裁判で著作権ありとされたもの著作権なしとされものを以下の表に列挙します。
これを見れば「観賞して楽しむ(著作権)」と「実用品として利用する(意匠権)」の境界が、なんとなく見えてくるかもしれません。(注1)
著作権あり | 博多人形「赤とんぼ」(長崎地裁佐世保支部,昭和47年(ヨ)第53号) 妖怪フィギュア模型(大阪高裁,平成16年(ネ)第3893号) |
---|---|
著作権なし | ファービー人形(山形地裁,平成11年(わ)第167号) 動物フィギュア模型(大阪高裁,平成16年(ネ)第3893号) |
注1:表に挙げた人形,フィギュアは量産可能性がある実用品といえるので、著作権で保護を受けられるケースでも、意匠権の保護も併せて受けられたであろうと思われます。(実際は意匠権を受けてなかったため、創作により当然に発生する著作権での保護を求めた裁判ではありますが。)
(2)権利内容の比較
デザインを保護する権利としては、保護の対象によって意匠権と著作権の2つの権利があることを説明しました。
意匠権も著作権も同じデザインを保護するという点では共通するので、その権利内容も同じようなものだろうと考えがちです。
ところが実際はこの2つの権利はその内容が大きく違います。
意匠権と著作権の権利内容の主だった違いを次の表にまとめました。
意匠権 | 著作権 | |
権利の発生 | 登録主義(注1) | 無方式主義(注2) |
---|---|---|
権利の性質 | 絶対的権利(注3) | 相対的権利(注4) |
権利満了期間 | 意匠登録後20年 | 著作者死後50年(原則) |
権利の維持手続 | 維持年金の納付が必要 | 不要 |
注1:登録主義 | 権利(意匠権)を得るためには、特許庁に意匠出願を行い、意匠登録される必要があること |
---|---|
注2:無方式主義 | 著作物を生み出しただけで、当然に権利(著作権)が発生すること |
注3:絶対的権利 | 意匠登録の内容を全く知らない他人が、偶然同じデザインを創作して、製品を製造や販売をしても意匠権侵害になること |
注4:相対的的権利 | 著作物の内容を全く知らない他人が、偶然同じデザインを創作して、自分の作品として販売している場合には著作権侵害にならないこと |
このように同じデザインを保護する権利でありながら、その保護内容は大きく異なります。 なかでも著作権は作品を創作するだけで当然に権利が発生するが、意匠権は特許庁に意匠出願し、意匠登録を受けないと何の権利も発生しないという違いは多くの争いを引き起こす要因になっています。
(3)権利侵害訴訟でよく争いになっている点
権利侵害の裁判でよく争いになっているのが、先ほど指摘した通り、著作権で保護が受けられると考えて、意匠権を取得せずに販売したところ、実は著作権の対象ではなかったので、模倣品・類似品を排除できなかったというものです。
著作権で保護できるのであれば、わざわざ登録を受けなくても権利が発生するので、権利に係る費用を抑えることができます。
しかし実用品のデザインの場合、意匠権で保護するのが原則なので、著作権での保護を期待することは危険です。 このような問題を起こさないためには、保護を受けたいデザインの種類をよく検討し、これは著作権で保護を受けられるのか、それとも意匠権で保護を受けられるのかを十分理解しておくことが必要です。
著作権で保護される実用品
既に著作物として認められているデザインを使用した実用品の場合、著作権による保護が受けられます。
もしかしたら、これはさきほどの話と矛盾することを言っていると感じれるかもしれません。
このケースで重要なのは、そのデザインについて既に著作権が発生しているという点です。
つまり「絵画が先,製品は後」ということです。
このような例としてキャラクターグッズが挙げられます。
既に存在する著作物のデザインをそのまま実用品のデザインに取りいれたケースでは、意匠法ではむしろ、その著作物から容易に創作できた意匠として、意匠登録できない可能性さえあります(意匠法3条2項)。
左のイラストでは、著作権で保護される実用品の例として、上の(既に著作物として認められている)絵画のデザイン(リンゴを持ったタヌキ)を取り入れたトートバック(実用品)です。
キャラクターのぬいぐるみなどでは、まず絵画や漫画などで著作物として確定させたあとで、そのモチーフデザインを使ったぬいぐるみ(実用品)をつくった場合に著作権での保護が受けられます。
裁判で著作物と認められなかったファービー人形も、まず漫画のキャラクターとしてファービーを登場させ、その後キャラクターグッズとしてファービー人形を販売すれば、著作権による保護を受けられたかもしれません。
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