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意匠権取得のメリット
意匠権は、工業製品のデザインを保護する権利です。 意匠権を取得すると、意匠登録した意匠(製品デザイン)と全く同じデザインや、同じではなくても類似したデザインの侵害製品(いわゆる「デッドコピー品」「模倣品」「類似品」)を製造したり、販売している業者に対して、その侵害製品などの製造,販売を止めさせることができます(差止請求権,意匠法37条)。また既に侵害製品が販売されてしまったことによる損害については、損害額の賠償をさせることもできます(損害賠償請求権,民法709条)。
このように、意匠権は製品デザインを保護する権利ですから、製品の技術を保護する特許権などとは少し異なるメリットがあります。以下では、そんな意匠権のメリットについて、主に特許権との比較で見ていきたいと思います。
購入意欲を湧かせる製品デザイン
皆さんは、家電量販店やホームセンターで買い物しようして商品を選んでいるときに、各社から同じような製品が発売されていて、それぞれの製品に特徴のある機能があったのだけれど、結局はデザインのいいものを選んでしまったというご経験はないでしょうか?
市場が成熟している分野では、最低限必要とする機能を持っている製品であれば、最終的な購入の決め手は、製品のデザインであることがよくあります。つまり、製品デザインは、その製品の購入意欲を湧かせる重要なポイントです。
したがって、意匠権は、このような製品の利益の源泉であるデザインを真似されないように保護できるというメリットがあります。
模倣品,類似品はデザインをまねる
いわゆる「模倣品」「類似品」といわれるものは、外見がホンモノとそっくりでありながら、品質(=技術)で劣っているものであることが多いです。
しかし、外見だけを真似ている模倣品,類似品は、「技術が劣る」=「技術が異なる」ため、特許権ではおさえることができないことが多いです。
したがって、意匠権には、外見の真似をする模倣品,類似品をおさえることができるという特許権にはできないメリットがあります。
侵害製品の発見,判断が容易
ある製品の新技術は、製品の外側から見て分かる場合もありますが、製品の内部や素材にその新技術が使われていることもよくあります。侵害品かどうかの「あたり」をつけるも難しく、例えば量販店で特許権侵害が怪しい他社製品を見つけても、その他社製品を購入し、内部を分解して調べたり、使っている素材の分析調査したりしないとわかりません。
一方、意匠権は、製品のデザインを保護する権利なので、店頭に並んでいる他社製品を見ただけで、意匠権の侵害品かどうかの「あたり」をつけることができます。(注1)
したがって、意匠権には、権利侵害のおそれがある製品を簡単に発見しやすいというメリットがあります。
注1:このように、意匠権の場合、侵害品の「あたり」をつけることは簡単なのですが、最終的に「類似」しているかどうかは、見る人によってそれぞれで、意匠権者は「似ている」、侵害者は「似ていない」と感じやすいです。 意匠法の客観的な類似判断手法を知らないで議論すると、主観的な判断の水掛け論になりやすいため、最終的に侵害品として対応する前に、弁理士など専門家に類似判断してもらうことをお勧めします。
新機能が製品形状に表れているときには、新技術も保護可能
新しい技術はもちろん特許権で保護できます。しかしそれとは別に新しい機能が製品の形状に表れている場合には意匠権でも併せて保護できます。
例えば右のイラストの杓文字(しゃもじ)では、ご飯を掬う部分にデコボコをつけて、掬ったご飯がくっつきにくくなるように工夫しています。
また持ち手を、底に近づくほど太くしたことによって、杓文字が立つように工夫しています。
これらの工夫は、新しい技術の工夫であり、もちろん特許権を取ることができます。
しかしこれらは新しい製品デザインともいえるので、意匠権も取ることができます。
特許権では文章でその技術の権利範囲を定めますが、(注2)意匠権では図面(または写真)で、その製品デザインの権利範囲を定めます(注3)。
特許権のように文章で権利を特定すると、文章の解釈の余地があるので、権利内容が広いという利点があります。
その反面、侵害品か侵害品でないかかが文章の解釈次第で侵害判断がつきにくいという欠点もあります。
一方、意匠権のように図面で権利を定めると、見た目で判断できるので侵害品の判断が容易という利点がありますが、その反面権利の範囲が広くないという欠点もあります。
そこで特許権,意匠権両方の権利を持っておくと、お互いの短所をお互いの長所で補完し合うので新技術を多面的に保護でき、強い権利とすることができるというメリットがあります。
注2:例えば特許権では、ご飯がくっつかないデコボコを設けたことは、「飯を掬うひしゃく部表面及び背面に(デコボコの形状や大きさの説明)…である凹凸を連続して設けた杓文字」などの表現で権利内容を示すことになります。
注3:意匠権の物品名は文章で特定する必要があります。 また物品名だけでは分からないものは、物品の詳細もさらに文章で説明する必要があります。 仮に右上のイラストの杓文字が今までにないデザインだったので、従来の「杓文字」のイメージからはかなりかけ離れているものとしましょう。 そんなときには意匠出願書類で「右上のイラストの物品は杓文字で、上半分はご飯を掬う部分、下半分は持ち手である」といったぐあいに「物品」を文章で説明することになります。
権利期間が特許権より長い
特許権の権利期間は、原則として最長「特許出願日」から20年までです(特許法67条)。
一方、意匠権の権利期間は、最長「意匠登録日」から20年までです(意匠法21条)。つまり特許権の場合、特許出願書類を特許庁に提出した時から刻一刻と特許権の権利期間が減っていくのに対して、意匠権では、意匠出願書類を特許庁に提出しただけでは意匠権の権利期間は減ることはありません。
意匠登録されて、はじめて存続期間が減っていくことになります。
したがって、意匠権は特許権よりも長い期間保護できるというメリットがあります。
登録が比較的容易
特許行政年次報告書2010年版によると、2009年度のデータで、特許の場合、特許出願に対する登録査定率が50.2%であるのに対し、意匠の場合では、意匠出願に対する登録査定率が約94%と高くなっています。
また審査順番待ち期間も特許が平均29.1か月なのに対し、意匠の審査順番待ち期間平均7.1カ月と短くなっています。
したがって、意匠権は特許権よりも、権利化しやすく、かつ権利になるまでの期間も短い(注4)というメリットがあります。
注4:既に模倣品が出回っており、さらに審査を早めてほしいという事情があるケースでは、早期審査の請求を行うことができます。
意匠権のデメリット
反面、意匠権のデメリットも存在します。
意匠権の最大のデメリットは「類似」と認められる範囲が狭いことです。
「デッドコピー品」(デザインが全く同じ)場合は問題なく侵害といえますが、ホンモノとイメージが似ている、ホンモノの面影が残っている、という程度の「類似品」では、非類似、すなわち製品デザインが似ていないと判断されてしまうことも多いようです。
この意匠権のデメリットを少しでも解消するため、意匠法では「部分意匠制度」や「関連意匠制度」など意匠法特有の制度を設けています。
各制度の詳細は当事務所コラム「利用できる意匠法特有の制度」などをご覧ください。
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